ありがち創作文

目を開けるとそこはとても狭く光の無い空間だった。
よく考えると「目を開ける」という行動を初めて行った事に気付いた。
漠然と自分にはなんでもわかっていた。
本を読んだことも人の話を聞いたことも無いけれど
なんでもわかる気分になっていた。
実際わからないことなど無いのだろう。
そして自分が無から生まれた存在だということがわかっていた。
つまりは自分が構築物ではなくなんとなく発生した物だということ。
この空間には時間を数字で表す概念は無かったけど
自分が時と共に成長していることがわかった。
紐に繋がれていたけど、すぐにここから逃げ出すことも出来た。
でもここは居心地の良い場所ですぐに出る事が出来なかった。
まぁ、それが後々最悪な事態になっちゃうんだけどね。
ある時何か大きな力が働いてこの空間を出なきゃいけなくなった。
こんな瞬間が来るなんて知らなかった。
自分はそれを抗った。
この空間が居心地が良かったからじゃない。
じゃあ何故?
自分にはこの空間の外が地獄のような場所だと知っていたからさ。
地獄なんて空想だけどね、例えだよ。
この空間には言葉なんてものはなかったけど
僕はその恐怖から大声を出していた。
涙も流した。
でもその力は強大すぎて僕に拒否する権利を与えなかった。
空間の外に近づくにつれて今まであった記憶がどんどんなくなるのが分かった。
もうこの空間に残るのは無理だと気付いた時
なんでも知っていると思っていた僕は「諦め」というものを知った。
そして光はどんどん近づいて・・・


「山田さんよかったですね〜。元気な男の子ですよ〜」